研究概要 |
(1)顎関節強直症患者より摘出した関節頭と非強直群についてコラーゲン(I-V型)の局在を検討した。その結果、非強直群においてはI型の発現は線維層を中心に各層に発現しており、II型は線維軟骨層に局在していた。III,V型は変性性変化の強い部分において発現が亢進し、IV型は軟骨増生を伴う強い変性性変化を示す部分に発現していた。また、これらの発現は若年者において強い傾向があった。一方、強直群においては各コラーゲンの発現が弱く、発現部位の多様化が認められ関節軟骨を中心とした骨代謝能の低下が示唆された。 (2)さらにMMP-1,2,3,9,TIMP-1,2について免疫組織化学的に検討した。(i)癒着組織において線維芽細胞のMMP-2,3,9に対する反応を認めない症例が多く、線維成分の多い癒着群で、MMP-1は全例に陽性であった。(ii)全例にTIMP-1の反応を認めた。癒着組織は膠原線維の粗な部分の線維芽細胞にMMP-1,TIMP-1の反応が強かった。 (3)Autopsy時に採取したヒト右下顎頭のMMP-1,2,3,9,TIMP-1,2について検討した。(i)MMP-1,TIMP-2の反応はほとんどの症例において弱く、MMP-2は線維軟骨層や線維層の一部にびまん性に存在し、特に軟骨細胞増殖を伴った過形成性の線維軟骨層に比較的強い反応を示した。(ii)MMP-3の反応は弱かったが,線維軟骨層においてびまん性の局在し、MMP-9は肉芽様組織の増生や膠原線維配列の乱れなどを伴った変性性変化を示す部分に比較的強い反応を認めた。TIMP-1は石灰化軟骨層の軟骨細胞周囲基質や未分化間葉系細胞に反応を認めた。以上より、下顎頭の変性性変化における細胞外基質の発現に蛋白分解酵素,さらにその抑制因子の影響という多彩な制御機構が関与している可能性が示唆された。
|