研究概要 |
剖検材料の加齢に伴う下顎頭について、形態、X線像、組織像を解析した。その結果、加齢による変性は下顎頭の細胞成分の減少と関連しており、細胞外マトリックスの発現と分布で免疫組織学的に解析した。I、II,(協)、V型コラーゲン、フィブロネクチン、フィブロネクチンレセプター、ラミニンは変性の部分でより高度に発現したが、高齢ではその傾向は認められなかった。また(協)型コラーゲンとラミニンの発現した変性部ではTGF-βが発現し、これが血管内皮の増殖を促し骨形成誘導に関与していると思われた。 顎関節強直症の関節頭と非強直群でのコラーゲンの局在は、非強直群ではI型は線維層を中心に各層に発現し、II型は線維軟骨層に局在していた。III,V型は変性性変化の強い部分で発現が行進し、IV型は軟骨増生を伴う強い変性部分に発現していた。強直群では各コラーゲンの発現が弱く、発現部位の多様化が認められ関節軟骨と骨の代謝能の低下が示唆された。さらにMMP-1,2,3,9,TIMP-1,2について免疫組織化学的に検討した。(i)癒着組織において線維芽細胞のMMP-2,3,9の発現は少なく、線維癒着群でMMP-1は全例に陽性であった。(ii)全例にTIMP-1の反応を認めた。以上より、下顎頭の変性生変化における細胞外基質の発現に蛋白分解酵素,その抑制因子の多彩な制御機構が関与している可能性が示唆された。 今後は、骨の修復過程における各種のサイトカインの発現を免疫組織学的に、同時に組織リモデリングの場で機能すると思われるセリンプロテアーゼおよびその抑制因子発現との関連も検討する。
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