研究概要 |
本年度は大腸癌由来上皮細胞株(HT-29)をSalmonella(S)minnesota由来のLPSで刺激し,第1にHT-29がどのようなサイトカインを産生するかをPCR法,Northernblot法およびELISA法を用いて検討した。その結果,検索したサイトカイン12種[interleukin(IL)-2,IL-3,IL-4,IL-5,IL-6,IL-7,IL-8,IL-10,TNF-α,IFN-γ,TGF-β1,PDGF]のうちIL-6,IL-8,TNF-α,TGF-β1の遺伝子の発現が認められた。このためNorthernblot法により経時的にこれらサイトカインの遺伝子発現を検討したところ,IL-8およびTGF-β1遺伝子発現はS. minnesota LPS刺激によりdose-およびtime-dependentにup-regulateされていることが明らかになった。またこのregulationはActinomycin DやCyclohexamideによりinhibitされ,polymyxin BによってもブロックされることからLPSのLipid A部分により調節されていると考えられた。 第2にHT-29は恒常的にSecretory component(SC)を発現している細胞株であるためSC遺伝子・蛋白の産生・調節にも検討を加えた。その結果,SC遺伝子・蛋白ともにdose-およびtime-dependentにregulateされていることが明らかになった。また,SC遺伝子の発現はサイトカインと同様にActinomycin D, Cyclohexamideによりinhibitされ,polymixin Bによってブロックされた。 以上のことからin vivoにおいても細菌由来のLPSにより腸管上皮細胞は種々のサイトカインの産生とSCのup-regulationが起こっているものと考えられた。
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