脱灰したウシの皮質骨粉末試料から、50mMトリス緩衝液、1M塩化ナトリウム溶液、4M塩酸グアニジン溶液を用いて段階的に可溶性有機成分を抽出した。これらの抽出画分を濃縮したものを粗酵素標品として以後の実験に用いたが、グアニジン抽出画分はこの操作で白濁を生じたために、さらに上清(GS画分)と沈澱(GR画分)に分離して使用した。まず、これらの画分に含まれるプロテアーゼ活性をゲラチンあるいはカゼインを基質としたザイモグラフィーで調べたところ、塩化ナトリウム抽出画分(N画分)とGS画分、GR画分に分解活性が認められ、各画分間で活性を示すバンドはすべて一致していた。 つぎに骨基質に最も多く含まれる非コラーゲン性タンパクであるオステオネクチンに対する分解活性をゲラチンあるいはカゼインに対して分解活性を有する画分について調べた。基質のオステオネクチンはN画分に多く含まれることが以前の研究から判明していたので、N画分から各種クロマトグラフィーを用いて精製し、使用したが、オステオネクチンに対する分解活性はGR画分で強く、N画分中には認められなかった。 これらの結果から、ゲラチンあるいはカゼインに対して分解活性を示す同一の酵素によってオステオネクチンの分解が起こっているとは考え難く、ゲラチナーゼなどの既知の酵素とは異なる、オステオネクチンに対して特異的に作用する分解酵素が骨基質に存在していることが示唆された。現在のところ酵素の精製にまでは至っておらず、オステオネクチンを分解する酵素が一種類であるのか、また、この酵素が他の非コラーゲン性タンパクに対しても分解活性を有するかなど疑問として残るところである。これらを含めこの酵素のより詳細な生化学的特徴を解明中である。
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