研究概要 |
平成7年度の研究成果から、オステオネクチンに対して特異的に作用する分解酵素が骨基質に存在していることが示唆されたため、この酵素のより詳細な生化学的特徴と蛋白分解酵素活性について検討を加えた。 精製したオステオネクチンを基質として骨から各種抽出溶液により段階的に抽出、調整した粗酵素標品を加え反応させ、その反応生成物についてSDS-PAGEを用いて検討した。オステオネクチン分解活性はCa^<2+>の存在下でのみ認められたが、4-aminophenylmercuric acetate(APMA)などの活性化剤を加えることなく酵素活性が認められた。また、この酵素活性に対する阻害剤の影響をみたところ、EDTAまたは1,10-phenanthrolineを反応液中に加えることによりほぼ完全に酵素活性が阻害され、monoiodoacetic acid、DTT、diisopropyl fluorophosphateを加えても不完全ながら酵素活性の阻害が観察された。また、この酵素活性の至適pHはpH7.5よりやや酸性側であった。この分解活性により生じたオステオネクチンの反応生成物はSDS-PAGEで分子量26kDa、22kDa、20kDa、16kDa、14kDaの蛋白断片として認められたが、このうち26kDa、22kDa、20kDaの断片はintactなオステオネクチンよりコラーゲンに強い親和性を示す骨からの蛋白抽出画分にも認められた。 以上の結果ならびに平成7年度の研究成果から、オステオネクチン分解酵素はメタロプロテアーゼの一種であると考えられ、生体内では活性型の酵素として通常は骨基質のコラーゲンに結合して存在しているものと考えられた。また、この酵素の役割としては骨吸収時に単に骨基質中のオステオネクチンを分解するために働くのではなく、オステオネクチンを分解することによりその分解物のコラーゲンへの接着性を増加させるために働く可能性が推測された。
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