研究概要 |
口腔粘膜癌、唾液腺腫瘍の細胞接着因子と細胞外基質蛋白質(ECM)を免疫組織化学的に観察した。口腔粘膜癌におけるE-カドヘリン(E-cad)の染色性は、高分化型では癌真珠に陰性、それ以外の癌細胞の細胞膜には陽性であった。低分子型ではほとんど陰性であった。中等度分化型は、3種類のパターンがあり、癌細胞の細胞膜に陽性である陽性である1型、中央癌細胞塊に陽性を示し、辺縁癌細胞塊では陰性を示す2型、ほとんどの癌細胞に陰性である3型に分類できた。E-cad陽性細胞の割合は臨床的悪性度が高くなるにつれて低下し、口腔粘膜癌においてもE-cadが転移の抑制因子であることが示された。 発育唾液腺において、ラミニン(LN)、コラーゲンIVは胎生16〜18週で基底膜に陽性を示し、週齢を経るにつれて明瞭となった。テネイシン(TN)は胎生10週ごろ全ての上皮-間葉境界部に認められるが、胎生後期になると腺房部、介在部での反応は消失し、太い導管周囲に陽性を示した。成熟腺でLNは基底膜、フィブロネクチン(FN)は導管と間質、TNは小葉間導管周囲に陽性であった。腺リンパ腫では、腫瘍細胞にFN陽性で、LN染色により完全な腫瘍基底膜が確認され、分化程度の高さを反映したものと考えられた。多形性腺腫では筋上皮様腫瘍細胞(MMC)が細胞外基質を産生することで、粘液腫様、硝子様構造を形成し、軟骨化を促すと考えられた。腺様嚢胞癌においてもMMCと関連してECMの発現が認められ、類嚢胞の形成や増大に関与することが示唆された。 舌癌培養細胞(SCCKN)、唾液腺癌培養細胞(SGT-1)、NIH_3T_3について、LN,FN,TN,により処理したポリスチレン培養皿表面における細胞接着性を観察した結果、全ての培養細胞でLN,FN処理では有意に接着性の向上が見られるが、TN処理ではわずかであった。LN,FNとTNの併用処理によって細胞接着効果は阻害され、この接着阻害は培養腫瘍細胞(SCCKN,SGT-1)で顕著であり、コラゲナーゼ産生が関与している可能性が示唆された。
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