研究概要 |
口腔腫瘍における癌関連遺伝子の変化:変異したP53産生物は異形成を伴った口腔粘膜病変9例中2例に限局性に認められた。口腔粘膜癌では38例中30例に基底細胞層から下部棘細胞層におよぶ変異したp53産生物の陽性所見が認められ、この陽性率は腫瘍の悪性度と相関することが判明した。 口腔腫瘍における接着性因子の変化:E-カドヘリン(E-cad)は高分化型では癌細胞の細胞膜に陽性で、低分化型ではほとんど陰性であった。中等度分化型はほとんどの癌細胞に陽性である1型、中央部に陽性で辺縁では陰性を示す2型、ほぼ陰性の3型に分類できた。E-cad陽性細胞の割合は臨床的悪性度が高いほど少なく、口腔粘膜癌においてもE-cadが転移の抑制因子であることが示された。 唾液腺・唾液腺腫瘍における細胞外マトリックス(ECM)の発現:正常唾液腺ではラミニン(LN)は基底膜、フィブロネクチン(FN)は導管と間質、TNは小葉間導管周囲に陽性であった。腺リンパ腫では、腫瘍細胞にFN陽性で、LN染色で完全な腫瘍基底膜が確認され、分化程度の高さを反映したものと考えられた。多形性腺腫では筋上皮様腫瘍細胞(MMC)が細胞外基質を産生することで、粘液腺様、硝子様構造を形成し、軟骨化を促すと考えられた。腺様嚢胞癌においてもMMCと関連してECMが発現し、類嚢胞の形成や増大に関与することが示唆された。 in VitroにおけるMMCの作用:舌癌培養細胞(SCCKN)、唾液腺癌培養細胞(SGT-1)、NIH3T3について、LN,FN,TNにより処理したポリスチレン培養皿表面における細胞接着性を観察した結果、全ての培養細胞でLN,FN処理で接着性の向上が見られた。TNの併用処理によってSCCKN,SGT-1で顕著な細胞接着効果の阻害が認められ、これにはコラゲナーゼ産生が関与している可能性が示唆された。
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