研究概要 |
本研究は、未治療あるいは放射線、化学療法後の口腔扁平上皮癌患者より採取した腫瘍組織および腫瘍片より分離培養した癌細胞を用いて、抗癌剤耐性機構を解析し、それを端緒に耐性克服療法を開発することを目的としている。平成7年度に得られた成果を以下に述べる。 1.臨床材料より得られた腫瘍組織片をヌードマウス皮下に移植することにより、7症例の扁平上皮癌を分離することができた(未治療原発巣および転移リンパ節より2例、放射線治療後の原発巣および転移リンパ節より3例、放射線、化学療法後の原発巣再発部より2例)。現在、移植腫瘍を継代するとともに、in vitroでの培養細胞の樹立および抗癌剤感受性を検定中である。 2.多剤耐性遺伝子産物であるP糖蛋白の発現を調べるために、臨床材料より得た組織切片32検体を用いてC219モノクローナル抗体による免疫組織化学染色を行なった。その結果、約20%に陽性所見が認められた。さらに、検体数を増やすとともに、組織型や治療内容との関連についても検討中である。 3.口腔癌化学療法において重要な抗癌剤であるCDDP(シスプラチン)に対する耐性機序を解析するために、口底癌由来細胞であるKB細胞を用いて耐性細胞(耐性度50倍)を分離、樹立することができた。この細胞は、CDDP無添加の長期培養においても安定した耐性形質を保持しており、CDDP以外のCBDCA(カルボプラチン)、BLM, MMC, 5-FUに対しても交叉耐性を示した。耐性機序としては、少なくともCDDPの細胞内取り込みが約1/3に低下を示すほか、免疫細胞化学的およびウエスタンブロック法によりストレス蛋白である熱ショック蛋白のうちHSP27とHSP70の発現増強が認められている。
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