研究概要 |
本研究は,未治療あるいは放射線,化学療法後の口腔扁平上皮癌患者より採取した腫瘍組織および腫瘍片より分離培養した癌細胞を用いて,抗癌剤耐性機構を解析し,それを端緒に耐性克服療法を開発することを目的としている.平成8年度に得られた成果を以下に述べる. 1.臨床腫瘍材料をヌードマウス皮下に移植することにより,さらに8列の扁平上皮癌を分離することができた.前年度と併せ,未治療症例10例,放射線治療後症例3例,放射線,化学療法後再発症例2例となった.これらヌードマウス移植腫瘍のBLM感受性を調べた結果,それぞれの腫瘍で感受性に差異を認めたが,放射線治療,化学療法後の腫瘍で低感受性を示すものが多く,BLM以外の抗癌剤に対しても低感受性を示すものがあった. 2.多剤耐性遺伝子産物であるP糖蛋白の発現をC219モノクローナル抗体を用いた免疫組織染色で検討した結果,15症例(32検体)の臨床材料の5症例に,培養細胞6症例の2症例に陽性所見を認めた.しかし,ウエスタンブロット法ではP糖蛋白のバンドを検出できなかった. 3.in vitroで分離したCDDP耐性KB癌細胞(耐性度25倍)は,CBDCA,BLM,MMC,5-FUにも約2倍の低感受性を示した.この耐性細胞は,KB細胞に比べ,細胞内グルタチオン濃度に差はなかったが,約1/3のシスプラチン細胞内蓄積しか示さず,また免疫細胞染色およびウエスタンブロット法によりストレス蛋白であるHSP27とHSP70の発現増強が認められた. 4.併用化学療法として最もよく用いられているCDDP,5-FUにTHP-ADMを加えたレジメンについて,多剤耐性細胞を含むヌードマウス移植腫瘍を用いて検討した結果,投与順序としてTHP-ADM,5-FU,CDDPのほうがTHP-ADM,CDDP,5-FUより有効であることが明らかとなった.また,BLMについては,合成イソプレノイドとの併用により効果増強がみられた.
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