研究概要 |
本研究は,未治療あるいは放射線,化学療法後の口腔扁平上皮癌患者より採取した腫瘍組織より分離した癌細胞を用いて,抗癌剤耐性機構を解析し,それを端緒に耐性克服療法を開発することを目的としている.研究成果の概要を以下に述べる。 1.臨床腫瘍材料より分離したヌードマウス移植腫瘍15例(未治療症例10例,放射線治療後症例3例,放射線・化学療法後再発症例2例)についてブレオマイシン(BLK)などの抗癌剤感受性を調べた結果,未治療であっても自然耐性を有する腫瘍,放射線治療や化学療法後に耐性を獲得したと思われる腫瘍の存在が示された.その一部には,多剤耐性遺伝子産物であるP糖蛋白が関与している可能性が示唆された。 2.口腔癌に効果の高いシスプラチン(CDDP)に対する耐性機構を解析するためにin vitroで分離したCDDP耐性KB癌細胞(耐性度25倍)は,カルボプラチン,BLM,マイトマイシンC,5-フルオロウラシル(5-FU)にも約2倍の低感受性を示した.この耐性細胞は,KB細胞に比べ,細胞内グルタチオン濃度に差はなかったが,CDDPの細胞内蓄積の減少を示すほか,免疫細胞染色およびウエスタンブロット法によりストレス蛋白であるHSP27とHSP70の発現増強が認められた. 3.併用化学療法として臨床的に最もよく用いられているCDDP,5-FUにTHP-アドリアマイシン(ADM)を加えたレジメンについて,多剤耐性細胞を含むヌードマウス移植腫瘍を用いてその効果を検討した結果,投与順序としてTHP-ADM,5-FU,CDDPのほうがTHP-ADM,CDDP,5-FUより有効であることが明らかとなった。また,BLMについては,合成イソプレノイドとの併用により効果増強がみられた.ゆえに,抗癌剤の投与順序や効果増強薬剤の併用により,耐性腫瘍に対しても一層奏効率の高い治療が行える可能性が示唆された。
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