研究概要 |
実験には,ウィスター系雄性成熟ラット(180〜200グラム)を用いた.ラットを実験群と対照群の2群に分け,実験群のラットには,浅麻酔下において,片側上顎臼歯に歯科的侵襲を加えた.一定時間が経過した後,麻酔下で0.9%NaCl生理食塩水および4%パラホルムアルデヒドを含むリン酸緩衝溶液で灌流固定を行い,脳を摘出した.それぞれのラットの脳を2日間4%パラホルムアルデヒドで後固定した後,常温下でマイクロスライサ-(堂坂EM,DTL-1800)を用いて30μmの薄切切片を作製した.脳切片をトリトンXを含む緩衝溶液で洗浄した後,神経伝達物質であるセロトニンおよび神経活動のマーカーとなりうる初期発現遺伝子c-fosの抗体を用いて免疫組織化学的染色を行い、その切片を光学顕微鏡にて検鏡し,さらに写真撮影を行い比較検討した.その結果,実験群のラットでは,中脳においてセロトニンの分泌が増強された.また,大脳の特定部位にc-fosタンパクの発現が認められた.これらの結果から,ラットの歯に歯科的侵襲を加えることにより,三叉神経を介して中枢神経系に影響を及ぼすことが示唆された.そこで今後は,顎関節症のひとつの誘因と考えられている咀嚼筋の過緊張を実験的に引き起こし,セロトニン,c-fosタンパクおよびその他の神経伝達物質の発現を免疫組織化学的に比較検討することにより,中枢神経系におけるどの神経系のどのニューロンが,ある特定の刺激と関連するかについて検討を行う予定である.
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