研究概要 |
ニッケルチタン金属線を用いた高い弾性率の力(L):0.8g,1.5g,3g,6g,15g、細いステンレス金属線を用いた比較的高い弾性率の力(M):6g,15g、太いステンレス金属線を用いた低い弾性率の力(H):6g,15gの各矯正力を1日、7日、14日、21日、28日の各実験期間ラット第一臼歯に負荷し、それによって得られた資料についてエネルギー活性の指標酵素であるcytochromec oxidaseを破骨細胞を中心に検出し、画像処理によってその活性を定量化し、以下の結果を得た。(1)歯の移動量はM-15gの28日が最大となり、次にL-6gであった。L-0.8gでは28日間に左右第一臼歯頬側幅径で0.375mmの増加を示した。(2)組織所見では、L-0.8gでは変性組織は認められず、7日から21日に渡って圧迫部骨表面に比較的多くの破骨細胞が出現した。L-1.5gでは一部に変性組織が認められ、L-0.8g同様7日から21日に多数の破骨細胞が出現した。その他のL群、M群、H群には変性組織が最大圧迫部に認められ、特に7日から14日において多数の破骨細胞が出現した。歯根吸収はcontrol、L-0.8を除く他の群に認められたが、特にLでは1.5gの28日と3gの21日、28日に顕著に認められ、逆にH-6gでは少なかった。(3)cytochromec oxidase活性の光顕観察では、破骨細胞の多数のミトコンドリアに黒い点として強い反応が観察され、画像処理において定量的計測が十分に可能であった。同様の活性は破歯細胞にも認められた。以上の結果から、(1)力の強さと歯の移動量と破骨細胞のエネルギー活性の間には密接な関係が認められる。(2)極めて弱い矯正力によって変性組織を伴わない歯の移動が可能である。(3)歯根吸収は弱い持続的な力を加えた際に強く発現する可能性がある。
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