口腔内の保有歯数、歯の欠損部位、補綴状況と咀嚼能率との関係を調査し、その因子が咀嚼能率に関係するかを検討した。岐阜県Y町で行われた成人健康診査の受診者で歯科検診を受診した60、70歳代のうち、保有歯数と可撤、非可撤義歯を含めて24歯以上の歯を有する男性82名、女性95名、計177名を調査対象とした。 測定はピ-ナッツ2gを20回咀嚼し、10メッシュふるいを用いて、ふるい上に残った粒子を乾燥させたのち、重量で測定して咀嚼能率を求めた。対象者は性別、5歳ごとの年齢層別のグループに分けた。歯数は前歯と犬歯を合わせた「前歯」と「小臼歯」、「大臼歯(智歯を除く)」の3ブロックに分けて各ブロックごとの歯数を求めた。解析は歯数と咀嚼能率のピアソンの相関係数を求めた。 男性では60〜64歳のグループの小・大臼歯部において、相関係数r=0.60(p<0.01)から0.6(p<0.01)の有意な強い正の相関がみられた。65〜69歳では、前歯、小臼歯部に有意な正の相関がみられた。女性では、60〜64歳のグループで前歯・大臼歯部において、相関係数r=0.41(p<0.05)から0.43(p<0.05)の有意な強い正の相関がみられた。65〜69歳では、すべてにおいて正の相関がみられた。 以上より、小臼歯部も大臼歯部と同等に咀嚼能率に関与していることがわかった。
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