研究概要 |
本研究は、「リガンド構造にかさ高さと水酸基を導入することによる有機カルコゲン化合物の安定化概念」に基づき有機カルコゲン化合物の化学を体系化し、有機合成化学へと展開することを目的として以下の研究を行った。 A)キラルセレン化合物の不斉合成と物理、化学的性質の検討 キラルセレノキシドの不斉合成に関しては、基本的な方法論を既に確立済みであるが、より範囲のアルキル、アリール、ビニール基を有するセレニドを合成、その不斉酸化により光学活性セレノキシドを合成しその化学的、物理的性質の検討を行った。得られた各種セレノキシドからキラルハロセレヌランを合成するとともに、ハロセレヌランの求核置換反応によりアルコキシ、アシルオキシ、アルキルセレヌランの不斉合成した。また、活性メチレン化合物とセレノキシド、ハロセレヌランとの反応により各種のキラルセレノニウムイリドを不斉合成した。 B)キラルテルル化合物の不斉合成と物理、化学的性質の検討 各種のキラルハロテルランの合成に成功し、これらを基礎として、各種のキラルテルロキシドおよびテルロニウムイリドの合成検討を行った。 C)カルコゲン原子を含む不斉場を用いる不斉反応の開発 上記で合成した各種化合物の内、アリールセレノキシドを用い、新規な不斉プロトン化反応開発へと展開、パラアニシルセレノキシドを不斉プロトン化剤とし、2-ベンジルシクロヘキサノンの亜鉛エノレートを基質とした場合に89%eeが得られた。また、アリルセレノキシド、アリルセレニミドを用いる2,3-シグマトロピー反応を行い、最高で90%eeが得られている。
|