本研究は、核酸塩基の環内窒素のN-アミノ体を合成し、側鎖アミノ基をR-NCSまたはR-NCOと反応させ、sp^2N-N-カルバモイル官能基を有する化合物へ誘導し、これら誘導体自身および対応するN-ニトロソ誘導体について、抗がん性および抗ウイルス効果を検討することを目的とした。本年度は、含窒素芳香族化合物、特にピリドンタイプの環窒素のN-アミノ体を合成素剤として、その環外窒素のN-カルバモイル誘導体を合成してそのニトロソ化反応を検討した。ある条件下ではN-ニトロソ誘導体が高収率で得られ、これらに強いアルキル可能のあることが判明した。このアルキル化能は、制癌剤として使用されているBCNU、CCNU、ACNUなどニトロソ尿素系誘導体と類似するものである。しかし、その反応速度は小さいことも判明した。そこでカルバモイル基の他方の窒素原子に2-ヒドロキシエチルを導入したところ、中性水溶液中で瞬時にアルキル化反応が進行し、医薬品としては使用に耐えられないことが明かとなった。そこで、この水酸基をトリメチルシリル基(TMS)で保護したところ比較的安定なニトロソ誘導体が得られた。このTMS基の加水分解による脱保護はpHに依存することが知られている。一般に固型癌組織のpHは低いので癌組織中でより容易に脱保護され、活性なN^2-2-ヒドロキシエチル-N^1-ニトロソ体が遊離することが期待され、現在、その制癌効果を担癌動物を用いて検討中である。
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