1.エマルションの表面膜に相当する単分子膜でのリポ蛋白質リパーゼ(LPL)によるリポリシスを測定し、以下のことが明らかになった。 (1)トリグリセリド(TG)の分子当たり面積が一定値より大きいと、LPL活性はほとんど観察されない。これ以下(すなわち、分子の垂直配高性が高まる)では急激に活性は増加し一定値となる。 (2)TGの分子面積の制御はレシチン(PC)やスフィンゴミエリン(SM)などのリン脂質の添加によりおこなうことができた。SMは長鎖のTGのリポリシスを阻害することも明らかになった。混合単分子膜の崩壊圧の研究から、基質TGとSMの強い分子間力により、膜からLPLにTGが移行しにくくなり阻害がおこることが推定された。 2.脂質組成の異なるエマルション粒子やリポソーム粒子を調製し、その蛍光分光学的研究から次のことが明らかになった。 (1)エマルション表面のPC分子の運動はリポソーム表面のそれより制限されている。 (2)コレステロール(Chol)のPC膜への挿入のされかたは、エマルションとリポソームで異なる。 3.エマルションとリポソームにたいする血漿アポリポ蛋白質の結合性の研究から、以下のことがあきらかになった。 (1)エマルションにはリポソームにくらべ約5倍の血漿アポリポ蛋白質A-1が結合する。 (2)リポリシスを活性化するapoCIIや、肝細胞への移行を助長するapoEの親和性はCholやCholエステルの添加により調整される。 4.pH滴定法によるエマルションのリポリシスの測定から、TGのアシル鎖長によりその活性が変化することがわっかた。引き続き測定をおこなっている。
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