研究概要 |
1.粒子径が約100nmのエマルションにたいするリポ蛋白質リパーゼ(LPL)によるリポリシスを、以下の点に着目し、研究した。 (a)表面レシチン(pC)膜へのコレステロール(Chol)または、スフィンゴミエリン(SM)の添加。 (b)表面PC単分子膜での基質、トリグリセライド(TG)の溶解度の測定。 (c)LPL活性化ペプチド、apo C-llの結合性と活性化効率。 (d)リポリシスの見かけの速度論的パラメーター、Km(app)とVmx(app)の検討。 2.Cholの添加により、表面PC膜での基質TGの溶解度は減少し、SMの添加により増大した。apoCII無添加の場合のVmax(app)に対するCholやSMの効果から、表面膜でのLPL-TG複合体形成に関する真のKm値は、0.01(モルフラクション)程度であると推定された。また、Km(app)の値から、40%のChol添加でLPLとTGの親和性は変化しないが、33%のSMの添加で約5分の1に低下することがわかった。 3.apo C-ll(あるいは、相当量のヒト血清)の添加により、いずれのエマルションでもKm(app)はほとんど変化せず、LPLの結合に対するこのペプチドの影響は小さいことが明らかになった。一方、apoC-ll添加によるVmax(app)の増大は、PC/TGエマルションで10倍、PC,Chol/TGエマルションで20倍、また、PC,SM/TGエマルションでは5倍であった。 4.反応メデイウムからのapoC-llの結合量は、PC/TGエマルションにくらべ、PC,Chol/TGエマルションで30%,また、PC,SM/TGエマルションでは50%になることがわかった。これより、LPLの活性化にはapoC-llは必須であるが、その強さは必ずしも結合量と相関しないことが明らかになった。 血漿リポ蛋白質では、CholとSMが協同的に作用していると考えられ、この点についてエマルションを利用して研究を続けている。
|