研究概要 |
1.粒子径が約100nmのPC/TOエマルションにたいするリポ蛋白質リパーゼ(LPL)によるリポリシスを、以下の点に着目し、研究した。 (a)表面レシチン(PC)膜へのコレステロール(Chol)または、スフィンゴミエリン(SM)の添加によるヒト血漿からのアポリポ蛋白質apoC-llとLPLの結合性の変化とリポリシスの活性:メデイウムからのapoC-llの結合量は、PC/TOエマルションにくらべ、PC,Chol/TOエマルションで30%,また、PC,SM/TOエマルションでは50%になるが,これらの値はリポリシス活性と相関を持たなかった。LPLの結合はSMにより低下するが、Cholはほとんど影響を及ぼさなかった。これらのin vitroのリポリシスの結果はラットを用いたin vivoの結果とよく相関した。 (b)CholあるいはSMの添加による、エマルション表面膜の界面化学的性質の変化:蛍光性のdansyl基を結合したdansyl-PEを用いて、PC表面膜へのCholやSM添加による水和状態の変化を研究した:D2DとH2Oの置換による蛍光寿命と強度の測定から、SMは表面リン脂質分子間の相互作用を強め水分子を排除するが、Cholはむしろ水和を少し高める傾向のあることがわかった。これにより、LPLやApoEの結合性が制御されると推測された。Cholは表面膜内部の流動性を低下し、apoC-llの結合を弱めるが、LPLやApoEの結合性に重要な表面膜の親水基付近の構造にあまり影響しないことがわっかた。 2.粒子径が約50nmの超微少PC/TOエマルションへのアポリポ蛋白質群とLPLの結合性を研究した。 (a)50nmの超微少PC/TOエマルションは100nmPC/TOエマルションにくらべ、apoC-ll、apoEの結合は著しく低下するが、その一方、apoA-lの結合量は増大することが分かってきた。これに従い、リポリシスやLDLレセプターとの親和性も変化すると推測された。すなわち、表面膜とコアの脂質が同じでも粒子サイズにより血漿蛋白質の結合性は大幅に変化することが明らかになってきた。 3.平成7年-9年の研究成果を学術雑誌に公表するとともに、冊子にとりまとめた。
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