研究概要 |
本研究の目的は,無針注射器であるジェットインジェクター(JI)とイオントフォレ-シス(IP)のペプチド様医薬品の皮膚透過性を改善することにある.まずJIを用いて雄性ヘアレスラット腹部摘出皮膚の角質層に小孔を形成した後,この皮膚を摘出してIP用2チャンバー拡散セルに挟み,無処理時,JI処理時,IP使用時,及びJIとIP併用時の薬物透過性を比較し,それらの有用性を検討することとした. 本年度はペプチド様医薬品を使用する前に低分子化合物であるジクロフェナックナトリウム(DC-Na)を用いて,その皮膚透過性に及ぼすIPの適用条件(定電流,定電圧)の影響について調べた.その結果,無処理時と比較してJI処理時では約5倍,また定電流(0.3mA)IPでは約10倍の促進効果が観察された.しかし,JIとIPを併用した時では単独使用時とほぼ同様の促進効果しか観察されなかった.しかしながら,定電圧(0.5V)IPでは,無処理時と比較して約10倍高かったのに対し,JIを併用すると約40倍もの透過促進効果が観察された. 定電流IPとJIの併用時の皮膚間電位が,定電流IP使用時よりも著しく低下したことから,JI処理はIP時の皮膚の電気抵抗を減少させるが,JIとIPの併用による透過促進にはほとんど寄与していないことが示唆された.定電圧IPではJIとの併用で皮膚を介する電流が時間の経過とともに上昇し,それに伴ってDC透過量が著しく促進された.また,いずれのIP適用条件においても,DCの皮膚透過速度は皮膚を介する電流に相関していた.これはイオンの流れによって電流が生じているためと思われた.以上より,定電流IPは正確な量の薬物を投与するため,また,JI処理は定電流IPの初期の高い電圧による皮膚刺激を回避するために有効であると思われた.
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