新規の免疫抑制物質であるISP-1は、CsAやFK506に見られるようなリンパ球活性化過程でのIL-2産生抑制は示さないが、IL-2依存性の細胞増殖を阻害するとともに、スフィンゴ脂質合成の鍵となる酵素であるセリンパルミトイルトランスフェラーゼを非常に効果的に阻害する。有効濃度の比較からISP-1の細胞増殖抑制作用は本酵素の阻害と直接的に関係していると推定される。そこで、スフィンゴ脂質との関連でISP-1の作用機序を研究を行った。 ISP-1によるIL-2依存性マウス細胞障害性T細胞株CTLL-2の細胞増殖抑制機構を解析するために、細胞周期に与えるISP-1の影響を検討した。その結果、ISP-1はCTLL-2細胞の細胞周期にはほとんど影響を与えず、そのかわりDNA含量が2nより少ない核が多数検出された。このことはISP-1が細胞のアポトーシスを引き起こしている可能性を示唆していた。そこで、ISP-1によるアポトーシス誘導を確認するために、ISP-1処理後、DNAを抽出しアガロースゲル電気泳動で解析したところ、アポトーシスにより断片化したDNAが検出された。以上の結果は、ISP-1のCTLL-2細胞への作用は、増殖抑制というよりはむしろアポトーシスの誘導であることが明らかになった。さらに、このISP-1によるアポトーシスは、スフィンゴシンの添加によって阻害された。このことは、ISP-1がセリンパルミトイルトランスフェラーゼを阻害することによってアポトーシスを引き起こしていることを示している。以上のことから、ISP-1は細胞内のスフィンゴ脂質量を減少させることによりアポトーシスを引き起こし免疫抑制作用を発揮していると考えられる。
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