モルヒネ慢性投与マウスにおいてインターロイキン-1β脳室内投与が、ナロキソン誘発禁断症状に対しての抑制効果を示すことを見いだし、このインターロイキン-1の受容体の脳内分布を明らかにした。in situ hybridizationに用いるプローブの鋳型となるプラスミドの精製・定量に小型高速遠心機および分光光度計を用いた。さらに、インターロイキン-1の禁断症状抑制効果のメカニズムを明らかにするために行動薬理学検討を行い、インターロイキン-1βの抑制効果が、CRFおよびプロスタグランジンE2により仲介されていることを明らかにした。さらに、プロスタグランジンE2の効果は、プロスタグランジンE2受容体のEP3サブタイプにより仲介されていることを明らかにした。また、マウスに比べて多数の項目を観察することが容易なラットを用いた実験においても、プロスタグランジンEP3受容体による禁断症状抑制効果が観察されることをも明らかとした。平成8年度の研究において、ラット脳実質内投与による作用部位の詳細な検討を行う。ラットへの薬物脳室内投与および脳実質内投与を正確かつ効率よく行うため、本年度購入したマイクロインジェクションポンプは必須である。インターロイキン-1βのナロキソン誘発禁断症状抑制効果のメカニズムの解明に関して優先的に研究を行ったため、インターロイキン-1以外のサイトカインの麻薬依存性あるいは禁断症状発現調節への影響の検討に関しては、当初の予定より遅れている。しかしながら、インターロイキン-1βの禁断症状抑制効果がCRFおよびプロスタグランジン-E2により仲介されていることを明らかにしたことは、麻薬依存形成あるいは禁断症状発現に関与する神経回路を考察する上で有用な知見であると考えられる。インターロイキン1以外の種々のサイトカインの効果に関しては、平成8年度の研究の中で明らかにしていく。
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