モルヒネ慢性投与マウスにおいてインターロイキン-1β脳室内投与が、ナロキソン誘発禁断症状に対しての抑制効果を示すことを見いだした。このインターロイキン-1βの禁断症状抑制効果のメカニズムを明らかにするために、先ず、行動薬理学的検討を行い、インターロイキン-1βの抑制効果が、CRFおよびプロスタグランジンE2により仲介されていることを明らかにした。さらに、プロスタグランジンE2の効果は、プロスタグランジンE2受容体のEP3サブタイプにより仲介されていることを明らかにした。また、マウスに比べて多数の項目を観察することが容易なラットを用いた実験においても、プロスタグランジンEP3受容体アゴニストによる禁断症状抑制効果が観察されることを明らかにした。次に、インターロイキン-1βの脳内作用部位に関して、申請者らは、以前の研究によりインターロイキン-1受容体1型の脳内分布を明らかにしたが、本研究では、2型受容体発現細胞の脳内分布をin situ hybridization法を用いて明らかにした。一方、プロスタグランジンEP3受容体アゴニストの投与が、モルヒネ禁断時に起こる神経興奮を脳の広範な領域において抑制することを、c-fos mRNAの発現を指標とした分子生物学的解析により、明らかにした。このプロスタグランジンEP3受容体アゴニストの作用機序を明らかにする目的で、身体的依存形成および禁断症状発現に重要であることが知られている脳領域の青斑核に着目して検討を行ったところ、EP3受容体アゴニストの投与は青斑核における、モルヒネ禁断時c-fos mRNA発現を有意に抑制した。また青斑核ノルアドレナリン神経細胞の半数以上において、モルヒネの受容体であるオピオイド受容体μタイプとEP3受容体の共発現が観察され、EP3受容体アゴニストは青斑核におけるμ受容体を介した細胞内情報伝達を修飾することにより禁断症状抑制作用を発揮する可能性が考えられた。
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