研究概要 |
1.アクチン調節蛋白質ゲルゾリンのN端G1領域およびG1, G2-6領域を欠損させた変異体G2-6およびG2-3を大腸菌で産生させ、これらの変異体のゲルゾリンおよびコフィリンのアクチンに対するセバリング作用に対する影響を調べた。G2-6はG2-3より強くこの作用を抑制した。これらの変異体はゲルゾリンの機能を解明する上で有用となろう。 2.ヒトの大腸癌細胞株では、ゲルゾリンの発現が低下している例があり、これらの株に野生型ゲルゾリンを導入すると腫瘍原性が低下した。ゲルゾリンは、ヒト胃癌、膀胱癌に加え大腸癌においても癌化との関連が示唆された。 3.ゲルゾリン産生の低下しているヒト膀胱癌細胞株に、野生型ゲルゾリン遺伝子を導入して強制発現させると、紫外線(UVC)に対する抵抗性が増した。この細胞株では、G2M期の延長の促進が観察された。ゲルゾリンによる癌の増殖抑制には、細胞周期に対する作用が関与すると考えられた。 4.野生型ゲルゾリン遺伝子をレトロウイルスベクターに挿入して作製したパッケージ細胞ψCRIPを、ヌードマウスに移植したヒト膀胱癌細胞株2種の周辺にくり返し移植して、これらの癌の増殖を抑制することができた。ゲルゾリン遺伝子は、ヒト膀胱癌の遺伝子治療に有用であると考えられた。 5.野生型ゲルゾリン遺伝子を強制発現させたヒトTリンパ腫細胞株JURKATは、FAS抗体、セラミド、グルココルチコイドによるアポトーシスに対して抵抗性を示した。この系でプロテアーゼCPP32前駆体の分解抑制がみられた。ゲルゾリンは、細胞増殖の抑制のみでなくアポトーシスにも関与していると考えられた。
|