前年度に引き続き、物理化学的測定値をパラメーターとした重回帰式を用いた薬物の消化管吸収性予測式の構築を検討した。その結果、薬物の有する水素結合能(供与能および受容能)、脂溶性(イソオクタン分配係数)、EVA膜透過速度をパラメーターとして用いることにより、多くの化合物に適用可能な吸収予測式を構築できることが示唆された。 また、今年度は薬物の荷電と生体膜との間の静電的相互作用の指標の簡便な測定法についても検討した。すなわち、生体膜表面が負の電荷を有することから、カチオン交換樹脂を用いて各薬物の吸着性を測定した。樹脂としてカルボン酸基結合型シリカゲルを用いた。水素結合能のパラメーターに替え、樹脂への吸着性を生体膜と薬物の静電的相互作用のパラメーターとしてとして重回帰した結果、水素結合能のパラメーターを用いた場合と同等あるいはそれ以上の良い相関性と予測性が得られた。 さらに、これまで本方法により評価できる薬物の条件として、EVA膜透過速度測定の際、緩衝液に少なくとも数百μM程度溶解可能である必要があったが、薬物の溶解しやすい溶媒を添加することで溶解性を増した条件での透過速度を用いることにより、水溶液と同様に吸収性予測が可能であることが示唆された。これにより、本方法で吸収性を評価できる薬物の範囲が拡大された。
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