本年度はエリスロポエチン(Epo)遺伝子のプロモーター領域に存在するGATAモチーフのEpo遺伝子発現制御機構および低酸素圧下において誘導される遺伝子群について追究した。Epo遺伝子上流-32bpにはTATAボックスではなくGATAモチーフがラットからヒトにいたるまで保存されている。このGATA塩基配列のGをTに置換してTATA塩基配列に変異させると、正常酸素圧下においてEpo遺伝子の発現が促進されることがルシフェラーゼ・レポーターアッセイにより判明した。これはEpo遺伝子の発現は正常酸素圧下ではGATAモチーフのために抑制され、赤血球過多を防いでいると考えられる。またGATA転写因子の組織特異的発現制御下にあることが示唆される。次にEpo遺伝子以外にも低酸素状態において活性化される遺伝子が存在しているか、さらにこれらの遺伝子はEpo遺伝子と共通の酸素応答伝達系により制御されているかを追究すべく、Hep 3Bおよび臍帯静脈血管内皮細胞において、mRNA Differential Display法により遺伝子をスクリーニングした。低酸素状態において発現が誘導される遺伝子群(酸素応答遺伝子スーパーファミリー)の存在が明らかとなった。そして、全遺伝子の約1%が、このスーパーファミリーに属するものと考えられ、おそらく数百種類の遺伝子があるものと推定される。我々は、既に約2百種類の遺伝子をクローニングし、それらの中から約50種類の新規の遺伝子を発見している。
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