研究概要 |
1)酸素センサーに関する研究 高等生物における酸素センサーを探索すべく、一つは原核生物のKinase型に注目し実験を行った。低酸素の代わりに金属コバルトに曝すことにより、特異的にリン酸化されるクローンを一個選別することに成功した。これはノーザン解析により約2kbのところに一個のバンドとして同定出来た。もう一つは転写因子型に注目し、低酸素状態において活性化されるHNF-4について実験を行った。いろいろのHNF-4変異遺伝子を作製した。それを用いてレポーターアッセイを行ったところ、C末端のAF-2 domainが活性に必須であることが判明し、Hypoxia-responsive domainであると考えられる。 2)酸素金属応答遺伝子スーパーファミリー われわれは各種の遺伝子クローニング技術を用いて、低酸素状態あるいは金属暴露によって発現が誘導される遺伝子をスクリーニングした。われわれはmRNA differential display法により5種類ほどの新規の遺伝子を見いだした。またDifferentialscreeningによりとれた一個のcDNAについても、低酸素状態とコバルト暴露によってmRNAの発現レベルの上昇が確認された。塩基配列を決定したところ、LXXLL Motifを有しており、Transcriptional coactivatorである可能性が高かった。このリコンビナント蛋白は基本転写因子を含めた各種の転写因子との相互作用があることが認められた。 3)エリスロポエチン遺伝子の発現制御機構 多くの遺伝子のプロモーター領域-30baseの領域には、TATA Boxがあり、基本転写因子 TATA-binding protein(TBP)が結合し、あるレベルの基本転写が常に起こっている。しかしエリスロポエチン遺伝子は正常状態では転写活性が抑制されている。その原因として-30base領域が、TATA BoxではなくGATA Motifになっているために、正常状態での転写活性が弱いと考えれる。従ってエリスロポエチン遺伝子のプロモーター領域は、低酸素状態で活性化されるのみならず、正常酸素状態で転写活性が抑制されていることが判明した(Tsuchiya et al.J.Biochem.121,193-196,1997)。
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