遺伝子トラップ法において、どういうトラップクローンを選択して解析するかが重要なポイントとなる。選択法として、胚様体形成を用いることにした。まず、胚様体が正常発生をどのていど反映しているかを解析するため、内胚葉由来臓器である肝臓で発現する遺伝子である、α-fetoprotein、transthyretin、albuminをマーカーとして用い、胚様体形成の過程での発現を解析した。その結果、α-fetoproteinとtransthyretinは早期から遺伝子が発現するが、albuminはかなり後期にならなければ発現しないことがわかった。したがって、正常発生をある程度は反映していると考えられ、選択法として採用してもよいと推察された。トラップベクターが複数コピー組み込まれた場合は、トラップクローンからの内在性遺伝子の単離は容易ではない。このため、ES細胞に挿入された余分なベクター部分を取り除くために、マーカー遺伝子の両端にloxP配列を組み込んだベクターの作製に成功した。マーカー遺伝子としては、大腸菌のlacZ遺伝子とネオ耐性遺伝子を融合したβ-geo遺伝子を用いた。このベクターを用い、ES細胞に電気穿孔法で導入し、ネオマイシン耐性トラップクローンを100個単離した。これらを順次フィーダー細胞を除いて浮遊培養し、胚様体を形成を行なわせた。胚様体形成過程で、X-gal染色を行ない、発現パターンを解析した。その結果、基本的には6つの発現パターンに分類することができた。第1は、ずっと発現するタイプ、第2は、胚様体形成と共に、発現が消失するタイプ、第3は、胚様体形成と共に、発現が増加するタイプ、第4は、ネオ耐性ではあるもののlacZの発現は検出できないもの、第5は、中間の時期に発現が減少または消失するもの、第6は、中間の時期のみに発現が増大するものである。
|