研究概要 |
遺伝子トラップ法を用いた変異マウス作製において、トラップクローンをどのような基準で選択するのかが重要なポイントとなる。胚様体形成過程が、初期胚ことに内胚葉の発生過程に類似しているかどうかを詳細に解析した。用いたマーカーは、転写因子としてvHNF1,HNF1,HNF3β,HNF4、肝臓特異的遺伝子としてtransthyretin,alpha fetoprotein,albumin遺伝子である。解析の結果、発現パターンは正常の内胚葉の形成過程のパターンと類似していること、したがって胚様体形成が正常発生を反映することが分かった。トラップベクター(loxP-splice acceptor-β-geo-loxP-pUC19の構造を持つ)を導入した120クローンを単離した。このうちβ-geoが常時発現するもの、最初は発現しているが胚様体形成と共に発現消失するもの、最初は発現しないが後に発現するもの、途中で発現が消失するもの4つのESクローンについて未知遺伝子の単離を行なった。その結果、前記発現パターン順に、サイクリンB2、リボゾームRNA、未知遺伝子、ミトコンドリア遺伝子であった。以上から、loxP配列をベクターに挿入しておくことにより、比較的容易にトラップした遺伝子を単離できること、胚様体形成時の発現パターンと単離できた遺伝子との間に特に相関はないこと、しかし、このスクリーニング法は極めて有効であるとが明らかとなった。
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