研究課題
バキュロウイルス-昆虫細胞系を用い、CYP3A7、NADPH-P450還元酵素の共発現系を構築し、ステロイド類の代謝について検討した。CYP3A7はCYP3A酵素の特徴的な内在性基質であるテストステロン、コルチゾールの6β-水酸化活性を示したが、CYP3A4の活性と比較すると極めて低値であった。一方、デヒドロエピアンドロステロンおよびその硫酸抱合体の16β-水酸化活性は他のCYP3A酵素と比較して著明に高かった。デヒドロエピアンドロステロンとその硫酸抱合体の16α-水酸化反応のVmax値には約10倍の差が見られ、デヒドロエピアンドロステロンの16α-水酸化反応で高かった。これに対し、Km値はほぼ同程度であり、両基質間で差異がなかった。脂溶性はP450酵素に対する親和性に影響する重要な因子として知られるが、デヒドロエピアンドロステロンとその硫酸抱合体で親和性に差がなかったことは、胎児内で硫酸抱合体が主要であることと考え合わせ、CYP3A7の生理的機能を考える上で興味ある結果であった。また、CYP3A4の基質となることが知られているトリアゾラム、テルフェナジン、ジヒドロエルゴタミン、シクロスポリンのCYP3A7によるデヒドロエピアンドロステロンの16α-水酸化反応に対する影響を検討した結果、程度に差が認められたが、いづれも濃度依存的に阻害作用を示した。この結果は、CYP3A7が内在性ステロイドの代謝に加え、外来異物の代謝にも関与することを示唆するものであった。事実、CYP3A7はトリアゾラムのα-および4-水酸化活性を示した。Vmaxは4-水酸化反応で8倍高かったが、Km値には差が見られなかった。今後、ステロイド代謝に見られたCYP3A7に特徴的な反応が医薬品の代謝にも存在するか否か、CYP3A4の機能と比較検討することが必要であると考えられる。
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