研究概要 |
ヒト血液サンプル(2ml、EDTA採血)からゲノムDNAを抽出し、5種類のプライマーを用いてPCR(Polymerase Chain Reaction)法によりN-アセチルトランスフェラーゼ(NAT) geneのうち3ケ所を増幅した後、RFLP(制限酵素断片長多型)法に従い、制限酵素(KpnI、 TaqI、 BamHI)を用いて点突然変異の有無を確認しNAT遺伝子型を決めた。日本人145名についてNAT遺伝子タイピングを行った結果、正常遺伝子allele1のhomozygote(表現型ではrapid acetylatorに対応)は44.2%、allele1とそれ以外の変異遺伝子(allele2、 allele3、 allele4)との組み合わせ(intermediate acetylator)が48.9%とほぼ半分ずつを占めたのに対し、変異遺伝子同士の組み合わせ(slow acetylator)は、6.9%と最も少なかった。この結果は、日本人において報告された表現型での分布(S. Sunahara, Science, 1961)並びに51名の遺伝子型での分布(M. Mashimo, Hum. Genet,1992)とほぼ一致すると考えられた。このNAT遺伝子解析過程は、1日半と短期間で診断可能であり、臨床応用が十分可能であると考えられる。但しallele4の検出において、PCRで増幅した部位(710bp)と、制限酵素処理後のフラグメント(655bp)との差が小さいため、変異の有無の判断が不明確であり今後新たなプライマー用いた検討が必要である。 一方、健常人において、イソニアジド(INH)又はプロカインアミド(PA)投与実験を行った結果、INH投与24時間後の尿中N-アセチルINH/INH排泄量比、PA投与12時間後の尿中N-アセチルPA(NAPA)/PA排泄量比並びに投与2ないし5時間後の血中NAPA/PA比において、アセチル化代謝能とNAT遺伝子型との間に相関が認められた。しかし代謝経路が複雑である為、詳細な薬物動態パラメータは未だ算出されていない。この点についても、次年度に得られる患者の血中濃度及び尿中排泄データと併せて解析を行う。
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