研究課題/領域番号 |
07457558
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
奥村 勝彦 神戸大学, 医学部・附属病院, 教授 (60025707)
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研究分担者 |
谷川原 祐介 神戸大学, 医学部・附属病院, 助教授 (30179832)
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キーワード | N-アセチル転移酵素 / CYP2C19 / 遺伝子タイピング / 毛髪 / 口腔粘膜細胞 / 爪 / PCR-RELP / 血液 |
研究概要 |
平成7年度に検討した多型性N-アセチルトランスフェラーゼ(NAT2)の血液検体での遺伝子タイピングは、PCR-RFLP法により操作も簡便で短期間で行える利点を有する。しかしながら、患者に採血の負担を強いるだけでなく、測定者への感染リスクという問題も抱えている。そこで、8年度において、より簡便で安全な検体として血液以外の生体試料(毛髪、口腔粘膜細胞および爪)に着目し、それらを用いる遺伝子タイピング法を開発した。 薬物代謝酵素は、NATとチトクロームP450の一分子種CYP2C19の2種類について検討した。このCYP2C19は、オメプラゾール、ランソプラゾール、ジアゼパム等の代謝を担い、日本人におけるpoor metabolizerの割合は約20%と高い。 まず健常人30例の血液検体により各酵素の遺伝子型を判明した。NAT2は4種類(正常遺伝子(NAT2^*4)及び変異遺伝子NAT2^*5B、NAT2^*6A、NAT2^*7B)、CYP2C19は3種類(正常遺伝子(CYP2C19wt)並びに変異遺伝子CYP2C19m1、CYP2C19m2)の遺伝子の組み合わせから遺伝子型を決定する。 次に、非血液検体から抽出した微量DNAを用いたPCR増幅効率及び泳動パターンの検討を行い、再現性のよいPCR条件を設定した。その結果、毛髪は、得られるDNA抽出量に個人差が認められたが、遺伝子タイピングには、毛幹部ではなく毛根部が必須であり、毛根1本からでも診断可能であった。また、口腔粘膜細胞はDNA回収量に個人差が認められず、PCR増幅も良好であった。なお、爪から抽出したDNAは、断片化の比率が高く、PCRは可能であったが、増幅効率は低い傾向を示した。そして、毛髪1本、わずかの口腔粘膜細胞および片手指分の爪から遺伝子タイピングの判定は30例において可能であった。さらにこれら生体試料での両酵素の遺伝子型は、血液検体での診断結果と全て一致した。本研究成果により、遺伝子タイピングの新しい選択肢が提供され、日常での臨床応用上有益であるとともに、今後の大規模疫学研究にも有用と考えられる。
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