遺伝子タイピングによる薬物血中濃度と薬効・毒性の予測

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07457558
• 研究機関: 神戸大学
• 研究代表者: 奥村 勝彦 神戸大学, 医学部・付属病院, 教授 (60025707)
• 研究分担者: 谷川原 祐介 神戸大学, 医学部・付属病院, 助教授 (30179832)
• キーワード: N-アセチル転移酵素 / CYP2C19 / 遺伝子タイピング / 潰瘍性大腸炎 / サラゾピリン / オメプラゾール / Helicobacter pylori / 除菌治療効果

研究概要

前年度に確立したN-アセチル転移酵素(NAT2)並びにチトクロムP450 CYP2C19の遺伝子タイピング法を用いて、平成9年度では以下の検討を行った。
1.潰瘍性大腸炎治療剤サラゾスルファピリジン(SASP)は、腸内細菌により有効成分5-アミノサリチル酸(5-ASA)と副作用の本体スルファピリジン(SP)とに分解される。健常人8名におけるSASP投与実験の結果、SPのアセチル化代謝能は基本的にはNAT2遺伝子型と相関し、特にNAT2*6A/*7Bでは副作用発現と関連性のあるSP血中濃度が顕著に高い値を示した。またSASP服用患者13名のうちSP血中濃度と因果関係のある副作用が認められたのは膵炎の1名で、その遺伝子型はNAT2*6A/*7Bであった。よって、NAT2遺伝子型の決定は、SASPの副作用発現の予測に有用であり、特にNAT2*6A/*7Bの患者の場合、5-ASA製剤への変更が必要であると考えられる。
2.オメプラゾール(OPZ)と抗生剤併用時のH.pyloriの除菌効果とCYP2C19遺伝子型との関連性について検討した。H.pylori陽性の胃炎、消化性潰瘍患者において、二剤・三剤併用療法(OPZ+AMPC(+CAM))を実施した結果、正常遺伝子wtを有する患者における除菌率は41-88%であるのに対し、変異遺伝子m1、m2の組み合わせを有する患者(Poor Metabolizers)では12例全員が除菌できた。よって、CYP2C19遺伝子型がPMと判定されたH.pylori感染患者は、OPZとAMPCの二剤併用療法で除菌できる可能性があり、CAMなど耐性を生じやすい薬剤の使用を避けられる点で有利と考えられる。
以上より、薬物代謝酵素の遺伝子型から、薬物体内動態と薬効・毒性の予測並びに患者への最適な投与薬剤の選択が可能であると考えられた。

研究成果

• [文献書誌] K.Okumura: "Genotyping of N-aretylation Polymorplism and Corvelation with Procatismide Metabolism" Clinical Pharmacology Therapentics. 61(5). 509-517 (1997)
• [文献書誌] K.Tanaka: "Relationship between Expression Level of P-gp and Pannorubicin Transport in LLC-PK_1 Cells Transfected with Human MDRI gene" Biochemical Pharmacology. 53(5). 741-746 (1997)
• [文献書誌] F.Komada: "Protective Effect of Transfection with Servetable SOD Expression Vector on Superoxide Anion Induced Cytotoxicity in Vitro" Biological Pharvarentical Bulletin. 20(5). 530-536 (1997)
• [文献書誌] M.Okazaki: "Cross-Reactivity of TDX and OPuS Immuncassoy Systems for Serum Digoxin Determination" Therapentic Drug Monitoring. 19. 657-662 (1997)
• [文献書誌] Y.Tanigawara: "Relationships between P450 Genotype and Efficacy of Omeprazole for the treatment of H・pylori Infection" Gastro enterology. 112. A308- (1997)
• [文献書誌] 喜多 知子: "非血液検体を用いたCYP2C19多型の遺伝子タイピング" 臨床薬理. 28. 277-278 (1997)
• [文献書誌] L.Aarous: "The Population Approach : Measuring and managing Variability in response, concertration and dose" European Commission, Science, Research and Development, 439 (1997)