研究概要 |
k-オピオイド神経系の学習・記憶に対する生理学的意義を明らかにするため,コリン作動性神経伝達を抑制するcarbachol,scopolamineまたはmecamylamineにより誘発される学習・記憶障害に対するk-オピオイド受容体作動薬の作用を,行動薬理学および神経化学的に検討し,以下の結果を得た. 1)Carbacholにより誘発された学習・記憶障害は,dynorphinA(1-13)(0.5nmol/mouse)をcarbacholの投与5分後に側脳室内投与することにより有意に改善された. 2)ムスカリン受容体拮抗薬であるscopolamineや,ニコチン受容体拮抗薬であるmecamylamineによる学習・記憶障害は,選択的なk-オピオイド受容体アゴニストであるU-50,488Hにより改善された. 3)Carbacholを海馬内に灌流すると,海馬の細胞外アセチルコリン濃度が有意に減少した.この作用は,dynorphinA(1-13)(0.5nmol)を側脳室内に投与することにより有意に抑制された.また,DynorphinA(1-13)による抑制作用は,nBNI(5.4nmol)の前処理によりほぼ完全に拮抗された. 4)Mecamylamineによる細胞外アセチルコリン濃度の減少をU-50,488Hは有意に抑制した.また,この作用は,nBNI(5.4nmmol)の前処理によりほぼ完全に拮抗された. 以上の結果より,k-オピオイド受容体アゴニストは,アセチルコリン遊離の減少を伴う学習・記憶障害を改善する作用があることを示唆した.
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