本研究は尿蛋白をキャピラリー電気泳動により分析し、その泳動像から薬剤による腎障害を早期に検出することを目的とした。 初年度はキャピラリー電気泳動法による蛋白分析法の基礎的検討を詳細に行った。同時に対照法として用いるセルロースアセテート膜電気泳動法の感度が著しく低いため、この感度を向上させる高感度染色法の開発をも併せ検討し、正常人の原尿のままで、蛋白分画が可能なセルロースアセテート膜電気泳動法を開発した。これは本研究の副産物ではあるが、その後の研究の進展に大きく貢献した。 第2年度はキャピラリー電気泳動法で正常人尿で、220nmに吸収を有する蛋白およびその他の物質44の成分を観察し、逐次その同定を行った。また微量尿蛋白の変化を呈することが知られている糖尿病患者を対象として腎症の進展と尿蛋白分画との関連を検討し、蛋白の分画定量が腎障害の早期発見だけでなく、特に低分子蛋白の分画定量できる利点は糸球体性と尿細管性との鑑別および予後予測に有用であることを確認し、その成果を報告した。 第3年度には、本格的にキャピラリー電気泳動法を用い、腎障害を呈しやすい薬剤を投与した際の尿蛋白の動態を解析しつつある。現時点では研究を継続中であるが、近くその成果を発表する予定である。我々はこれまでの成果から薬剤による腎障害の早期発見へもキャピラリー電気泳動法が極めて効果的であるとの結論が得られると確信している。
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