研究概要 |
腎臓の近位尿細管細胞で濾液中のL-ドーパを基質として産生されるドーパミンは尿細管細胞のNaトランスポートを制御してNa利尿を司る。腎炎又は間質炎で尿細管細胞が障害されると尿細管でドーパミンが産生されなくなるため、ドーパミンの尿中排泄量は低下する。従って尿中排泄ドーパミン量を測定して腎機能の評価が可能と考えられた。そこでクレアチニン(Cr)濃度、Crクリアランス(Clcr)、尿中α_1マイクログロブリン(U-α_1MG)、尿中β_2マイクログロブリン(U-β_2MG)、尿中NAG(U-NAG)濃度とドーパミン濃度とを比較した。随時尿中ドーパミン濃度はClcr、血中Cr濃度、U-α_<下1>MG、U-β_2MG,U-NAGとそれぞれ相関することから、尿ドーパミンでもって腎機能評価出来ることを証明した。しかし尿を用いる腎機能評価法が既に数多く知られていることから、診断学的感受性並びに特異性についてドーパミン法と既法と比較するため、血清Cr濃度でもって基準範囲群と基準範囲以上群の2群に分別して検討すると、男性及び女性に於いて尿ドーパミン法はU-α_1MG、U-β_2MG、U-NAG法と比較してより有用であった。従って、尿ドーパミンは尿細管障害のよきマーカーであると考えられる。腎機能不全で腎移植を施行された患者尿を用いて検討すると腎不全時に低ドーパミン濃度尿を示したにもかかわらず、腎移植後は正常ドーパミン濃度へと改善した。尚この濃度移行は腎移植術の成否を決定する上で重要と考えられた。以上より、尿中ドーパミン濃度は優れた尿細管機能評価マーカーであり、臨床応用可能と考えられる。
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