尿中には遊離型と抱合型ドーパミンが多量に測定できる。交感神経及び副腎髄質から放出されるドーパミンは血中にて99%の割で抱合化されるため、血中遊離型ドーパミン量は微量となり、腎にて濾過されるドーパミンは抱合型ドーパミンである事を証した。尿中遊離型ドーパミンは腎尿細管由来であることから、尿中遊離型ドーパミン量の測定でもって腎機能が評価しえることを検討した。まず、腎移植前後での尿中遊離型ドーパミン濃度を検討した。移植前では殆ど尿中遊離型ドーパミン濃度を検出し得なかったが、移植腎が定着することにより尿中遊離型ドーパミン排泄量が増大し、このドーパミン濃度測定が移植腎機能を示すことを明らかにした。 腎近位尿細管細胞由来のドーパミンは尿中に放出されることから、尿中ドーパミン濃度を測定して腎近位尿細管機能と他の腎機能検査法と比較検討し、尿中ドーパミン(遊離型)を用いる検査法の実用化を試みた。髄時尿中遊離型ドーパミン濃度(クレアチニン濃度で補正)はクレアチニン・クリアランス、尿中α_1マイクログロブリン濃度、尿中β_2マイクログロブリン濃度、尿中NAG濃度と相関することを立証し、ROC解析によりドーパミンはα_1とβ_2マイクログロブリン、NAGよりも腎機能評価の特異性、感度ともに優れていることを示した。疾患別の検討では、主として糸球体障害の腎炎では尿中ドーパミン濃度は基準範囲内であり、尿細管障害を伴う腎不全では著明に低下し、尿細管障害を呈するFanconI症候群、尿細管性アシドーシスでは低下傾向を示した。従って、ドーパミンを用いる腎機能検査法は有用と考えられる。
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