研究概要 |
平成8年度では,東京都内の産院において,ナ-スおよび患者を対象とし,鼻腔からはシ-ドスワブにて細菌を採取し,手指からはTRY培地にスタンプして細菌を採取した.その後,CZX含有MZN培地に塗付・培養,HI塗付・培養し,メチシリン耐性ブドウ球菌属の保有率を算出した.メチシリン耐性ブドウ球菌の保有率(順にMRS,MRSA)は,鼻腔では患者(11.5%,3.8%),看護婦(23.1%,7.7%),手指では患者(37.0%,26.6%),看護婦(31.7%,12.7%)であった. さらに,重複して調査を受けた人のメチシリン耐性ブドウ球菌属の保持率,消失率,新規感染率を算出した.保持率は,鼻腔では患者(0%),看護婦(8.7%),手指では患者(3.3%),看護婦(8.7%)であった.新規感染率は,鼻腔では患者(6.7%),看護婦(0%),手指では患者(36.7%),看護婦(17.4%)であった. この結果を受けて,同産院において2回目の調査として,分娩前後の母親のMRSA保有状況,退院1ヵ月後の母子のMRSA保有状況,スタッフのMRSA保有状況を明らかにするために,細菌を採取し,細菌培養を終えたところである.今後は,培養後のコロニーに対して,PCRによるmecAの検索を行ない,詳細な株の選定をDNA配列の検討により実施し,DNA解析による株特定にしたがった伝播経路の検索を行なう予定である。
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