遺伝子操作マウスにおける循環・呼吸・自律神経機能を研究するための方法を新たに開発し、エンドセリン(ET)-1遺伝子欠損マウスのヘテロ接合体(ET-1^<+/->)に適用した。無麻酔状態でマウスの瞬時血圧を計測し、心拍数を心電図R-R間隔より求めた。血圧および心電図R-R間隔よりパワースペクトルを計算し、血管運動神経の交感神経活動、心臓交感神経および心臓迷走神経活動を評価した。呼吸運動はマウス用に開発した身体プレチスモグラフ法を用いた。ET-1^<+/->と同腹野生型マウスとの比較を行い、以下の結果をえた。収縮期血圧のパワーススペクトルの低周波数成分(LFP)は、交感神経活動と正に相関した。R-R間隔から求めたLFPおよび高周波成分(HFP)はそれぞれ、心臓交感神経活動および心臓迷走神経活動に対応した。ET-1^<+/->では、野生型と比較して、血圧の有意な上昇が見られた。換気活動の計測より、ET-1^<+/->では平常時の換気機能には差がなかったが、低酸素または高CO_2負荷にたいする呼吸反射が減弱していた。自律神経活動にかんして、収縮期血圧のパワー密度におけるLFPの有意な増加が観察された。以上より、内因性ET-1は、血圧・呼吸・交感神経活動の調節に関係していると結論された。
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