研究概要 |
褐色脂肪組織の血流量および熱産生の調節における一酸化窒素NOの意義と関与機構を明らかにする目的で実験を行い次の成果を得た。 1.褐色脂肪組織の主要調節因子であるノルアドレナリンによる褐色脂肪組織の血流量および温度の上昇がNO合成阻害物質Lω-nitro-arginine methyl ester(L-NAME)の投与によって抑制されることを確認した。急性寒冷暴露による褐色脂肪組織の血流量と温度上昇がまたL-NAMEによって抑制された。 2.褐色脂肪組織の血流量と温度上昇はβアゴニストのisoproterenolによって上昇したが、α_1アゴニストのphenylephrineは血流量は変化させず、温度のみを上昇させ、この効果はL-NAMEによって抑制された。しかしphenylephrineはisoproterenolの血流量および温度上昇作用を促進した。また代謝作用を主体とするβ_3アゴニストのCL316,243も血流量と温度を上昇させ、L-NAMEはその効果を抑制した。 3.L-NAMEの慢性投与は組織重量とDNA含量を減少させ、寒冷刺激によるそれらの増加を抑制した。またノルアドレナリンによる全身の酸素消費量(非ふるえ熱産生)増加、さらに寒冷下での体温低下の促進、すなわち耐寒性の低下を起こした。L-NAMEの慢性投与は褐色脂肪組織のノルアドレナリンによるin vitro熱産生を抑制した。 4.ノルアドレナリンによる褐色脂肪組織ノルアドレナリンin vitro熱産生反応がL-NAMEおよびNOのスカベンジャーであり、guanylate cyclase阻害物質であるmethylene blueの急性添加によって抑制された。 5.視床下部腹内側核の電気刺激による褐色脂肪組織の血流量の増大がL-NAMEの投与によって抑制された。 以上の成果からNOが褐色脂肪組織の血流量の増加にみならず、組織増殖ならびに熱産生の調節にも関与していることが示唆された。
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