研究概要 |
まず、肝細胞癌、肝内胆管癌、転移性肝癌における膵関連酵素タンパク(トリプシン、キモトリプシン、リパーゼ)を免疫組織化学的に検討した。その結果、肝内胆管癌、転移性肝癌では高頻度に膵関連酵素タンパクの発現がみられたが、肝細胞癌には認められなく、膵関連酵素タンパクの発現は肝細胞癌と肝内胆管癌、転移性肝癌の鑑別に重要と思われた。次に、ヒト消化管の正常上皮と上皮性腫瘍における膵関連酵素タンパク(アミラーゼ、トリプシン、キモトリプシン、リパーゼ)とそのmRNAの発現を検討した。外科切除された種々の消化管正常上皮と上皮性腫瘍を用い、免疫組織化学、Western blot, in situ hybridization、 reverse transcriptase polymerase chain reaction (RT-PCR)、生化学的酵素活性定量で検討した。その結果、免疫組織化学的には、正常唾液腺、胃、十二指腸、膵管、肝外胆管、および胆嚢に、膵関連酵素タンパクの免疫反応性が認められたが、正常食堂、小腸、大腸には認められなかった。上皮性腫瘍では、唾液腺腫瘍、食堂癌、胃腺腫、胃癌、膵癌、肝外胆管癌、胆嚢癌、。大腸腺腫および大腸癌に膵関連酵素タンパクの免疫反応性が認められた。Western blot法で、免疫反応性の特異性が証明された。in situ hybridization法では、正常胃、十二指腸、胆嚢に各膵関連酵素タンパクのmRNAのシグナルが認められたが、正常食堂、小腸、大腸には認められなかった。RT-PCR法では、正常胃、十二指腸に各膵関連酵素mRNAの存在を示すバンドが認められた。生化学的酵素活性定量法では、正常膵、胃、胆嚢に各酵素活性を認めたが、大腸には殆ど認められなかった。以上、膵関連酵素タンパクとそのmRNAは膵以外にも、正常唾液腺、胃、十二指腸、膵管、肝外胆管、および胆嚢に存在し、正常食堂、小腸、大腸には存在しないと示唆された。消化管上皮性腫瘍は高頻度に膵関連酵素タンパクとそのmRNAを発現していることが示唆された。
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