研究概要 |
マウス、ラット(ビタミンC合成系欠損ミュータントラット、破骨細胞欠損マウスミュータント(mi)において、外因と組織修復の関係を明らかにすることを目的として研究を行なった。マウスを用いた骨折修復過程における組織学的、分子生物学的な検討を行ない、その過程に関与する因子の影響を調べた。具体的には実験動物の大腿骨、あるいは肋骨をダイヤモンドカッターで手術的に切断し、それを骨折モデルとして、手術後の経過観察を分子生物学的な手法を用いて行ない以下に示す結果を得た。 1.骨組織修復後の初期過程として、肢芽発生過程において重要な役割を担っていると考えられるBMP-4,Sox-9,Hox-2.6等の遺伝子mRNAが未分化間葉系細胞に強く発現していることをin situハイブリダイゼーションによって明らかにした。これらの遺伝子は正常状態の骨組織においては発現が観察されず、組織損傷を起点として転写活性が上昇したものと考えられる。 2.仮骨形成期において、正常状態においては発現の認められないOsteopontin遺伝子の強い発現を未分化骨芽細胞に検出した。Osteopontin遺伝子は種々の石灰化をともなう病変においても強い発現を示し、炎症を起点とするなんらかのシグナルによって誘導される性格を有すると考えられた。 3.生理的、あるいは強制的な歯の移動にともなう歯槽骨のリモデリングにおいて、骨細胞にOsteopontin遺伝子の強い発現を認めた。骨折治癒過程におけるこの遺伝子の強い発現誘導と、本現象には関係があると考え、0steopontin遺伝子の発現制御領域を解析し、TPA response element,AP1,E-boxなどのエンハンソンが機能していることを培養細胞レベルで確認した。
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