研究概要 |
ビタミンCを合成できないミュータントラット(ODSラット)における骨折治癒不全現象を分子組織学的に解析した。ODSラットにおいては正常に比較して著しい膜性骨化の欠損が観察され、オステオポンチン発現型骨芽細胞は全く認められなかった。また、内軟骨性骨化における軟骨細胞系細胞の分化にも異常が観察された。オステオネクチン発現型軟骨細胞、Matrix Gla Protein(MGP)発現型増殖軟骨細胞は認められたが、オステオポンチン発現型肥大軟骨細胞は全く認められなかった。このようにいずれの場合にもオステオポンチン遺伝子の発現がビタミンC欠損時に著しい阻害をうけることが判明した。オステオポンチンは石灰化に深く関与する蛋白であり、壊血病における石灰化の不全がオステオポンチン遺伝子の発現の阻害によることが強く示唆された。さらにOpn遺伝子の発現制御について分子生物学的検討を行った。その結果、オステオポンチン遺伝子の5'上流域300bpに結合して遺伝子発現を制御している転写因子としてPEBP2αA/CBFA1、Ets-1、PU.1、MITFをin vivo,in vitroで同定した。さらに、外力による骨のリモデリング時に骨細胞で発現するオステオポンチンが骨表面に達し、破骨細胞の遊走因子として機能していることを示した。特に圧迫力をうける面においてこの現象は顕著であり、骨折修復期において適度な外力が加わることが骨折治癒に必要であることが示されたと同時に、誤った方向からの力が仮骨形成とそのリモデリングに障害的であることも分子生物学的に示唆された。 また、石灰化を伴う骨肉腫ににおいて、骨肉腫の細胞それ自体が骨化するのか、あるいは骨肉腫から放出されたサイトカインが正常組織の細胞の骨化を誘導しているのかをヌードマウスへのヒト骨肉腫細胞の移植実験により検討した。ヒトとマウスの細胞は種特異的な反復配列の存在により識別した。症例により、両方の場合への分類が可能であることを示した。
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