研究概要 |
グリオーマの抗癌剤耐性には腫瘍細胞ではなく脳内の間質血管内皮に発現するMDR1遺伝子/P-GpおよびそれによるBBB様機能が密接に関与していると考えられている。本研究では、エンドセリンプロモーターで発現誘導したヒトMDR1遺伝子をマウス(wild type, BALB/c)に遺伝子導入し、マウス皮下の毛細血管に特異的にヒトMDR1遺伝子を発現させたトランスジェニックマウスを作出する。これを交配によってSCID/nudeマウス化したヒトMDR1トランスジェニックSCID/ヌードマウス(MDR1-SCID, MDR1-nu)にヒトグリオーマXenograftを皮下移植し、脂溶性の抗癌剤(Vincristine, VCR; Doxorubicin, DOXなど)に対するin vivo抗癌剤感受性を評価する。本年度は、皮下血管内細胞にヒト型のMDR1遺伝子/P-Gpを発現するトランスジェニックSCID・nudeマウス(MDR1-SCID, MDR1-nu)の作成のために以下の実験を行った。まず初めに、マウスエンドセリンプロモーター(東京大学、栗原博士より供与)にヒトMDR1遺伝子cDNAを結合したDNA分子(mEND-MDR1)を作成した。このmEND-MDR1を胚細胞操作によりBALB/cマウスに遺伝子導入し、mEND-MDR1が所期の計画通りに導入されたトランスジェニックマウス(MDR1マウス)を現在スクリーニング中である。今後は、このMDR1マウスを交配によってSCIDあるいはヌードマウス化し(MDR1-SCID, MDR1-nu)、マウス皮下結合組織毛細血管におけるヒト型MDR1遺伝子/PGpを発現、産生をRT-PCR法および免疫組織化学的手法により確認する。現在までにMDR遺伝子発現はノーザンブロット法およびRT-PCR (Reverse Transcription-Polymerase Chain Reaction)法によって検討できることを確認済みである。また、in situハイブリダイゼーション法およびin situ RT-PCR法によって、MDR遺伝子の発現の組織内局在を明らかにする予定である。
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