冠動脈位に植え込まれる人工血管は抗血栓性にすぐれていなければ閉塞しやすいことが知られている。我々は代用血管を開発する上で、早期の抗血栓性は人工血管壁からのヘパリンの徐放によるが、自己の組織内で活性化された内因性サイトカインの血管新生作用により植え込み後早期に細小血管の内皮細胞で全長にわたって被覆され、しかも外側へは新生された血管が虚血部へ側副血行路として働くことが可能な人工血管を開発を目的に研究を開始した。人工血管の設計、基礎構築と内因性サイトカインを得るための材料の選択、活性化のための処理法の検討、bFGFの免疫染色法の確立等の基礎実験を行った後に、材料としては高有孔性布製人工血管を用い、作成方法としては細切した自己組織片を陽圧をかけて繊維間隙に注入した。昨年度までの成果より、本年度は動物実験にて内因性サイトカインの側副血行路形成の可能性の評価を試みた。現在、実験動物の腹部大動脈といった大口径では良好な成績を上げているが、いまだに改良を続けている。冠動脈位用に直径4mmといった小口径でも基礎構築として充分な扱い易さを備えた人工血管を探している。また、遠隔期の安全性として、活性化された血管新生が過剰になり肉芽腫形成を起こす、あるいは肉膜肥厚を起こすことなどがないことを確認せねばならない。今後、動物実験にて抗血栓性賦与方法の改良及び遠隔期に内膜肥厚、平滑筋の内膜化への遊走を起こさないように代用血管処置法を改良したい。
|