冠動脈位に植え込まれる人工血管は抗血栓性にすぐれていなければ閉塞しやすいことが知られている。我々は代用血管を開発する上で、早期の抗血栓性は人工血管壁からのヘパリンの徐放によるが、自己の組織内で活性化された内因性サイトカインの血管新生作用により植え込み後早期に細小血管の内皮細胞で全長にわたって被覆され、しかも外側へは新生された血管が虚血部へ側副血行路として働くことが可能な人工血管を開発を目的に研究を開始した。1年目は人工血管の設計、基礎構築と内因性サイトカインを得るための材料の選択、活性化のための処理法の検討、bFGFの免疫染色法の確立を行った。材料としては布製人工血管を用い、作成方法としては細切した自己組織片を陽圧をかけて繊維間隙に注入した。材料として静脈、皮下脂肪、大網等を用いたが材料によりその治癒過程、程度が異なることが判明した。動物実験ではまず小片を皮下組織内に植え込み治癒過程、血管新生を観察し(1995年人工臓器学会、米国人工臓器学会にて報告)、さらに動脈位への植え込みを行い早期の血栓性及び内皮細胞被覆を観察した(1996年人工臓器学会、米国人工臓器学会にて報告)。2年目は動物実験にて内因性サイトカインの周囲への影響を観察した。現在、実験動物の腹部大動脈といった大口径では良好な成績を上げているが、改良を続けており、冠動脈位用に直径4mmといった小口径でも基礎構築として充分な扱い易さを備えた人工血管を探しているところである。
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