研究概要 |
2-オキサゾロンとアントラセンとの[4+2]環化付加体である4,5-(9,10-dihydroanthraceno)oxazolidin-2-one(DHAOx)よりもビシクロ環の橋頭位にメチル基を持つ4,5-(9,10-dihydro-9,10-dimethylanthraceno)oxazolidin-2-one(DMAOx)のほうがより高い不斉制御能を持つという知見から、ヘキサメチルシクロペンタジエンをもちいて4,5-[3,5-(1,2,3,4,4,5-hexamethy1-1,4-cyclopentano)]oxazolidin-2-one(HMCOx)を合成し、橋頭メチル基の効果をアルキル化・Diels-Alder反応において調べたところ、DMAOxと同様にほとんど完全なジアステレオ選択性を示すことを明らかにすることが出来た。さらに、2-イミダゾロンとアントラセン類から三環性2-イミダゾリジノン類の合成を検討し、両対掌体を光学分割法により得ることに成功した。若干の検討ではあるが、橋頭メチル基のある4,5-(9,10-dihydro-9,10-dimethylanthraceno)imidazolidin-2-one(DMAIm)が4,5-(9,10-dihydroanthraceno)imidazolidin-2-one(DHAIm)より不斉制御能が高いというデータを得ている。さらに、DHAImにおいては、窒素原子上の置換基をメチル基からp-トルエンスルホニル基に変えることによりジアステレオ選択性が向上するという興味深い知見を得ており、不斉制御を立体的嵩高さだけでなく窒素原子上の置換基により行うという新しい課題をも見いだすことが出来た。 三環性2-オキサゾリジノン類を開環することにより得られるビシクロ骨格系アミノアルコール類においては、ZnEt_2によるアルデヒドのエチル化反応をエナンチオ選択性高く触媒するばかりでなく、N,N-ジメチル体とN-スルホニル体で選択性が完全に逆転するという非常に興味深い現象を見いだすことができ、さらにN-スルホニル体のLi塩はメソ型環状酸無水物のジアステレオ選択的開環に効果的であり、酵素や微生物を用いても到達困難であった高選択性を純粋に化学的に実現することが出来た。
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