焼き魚は日本人に最もなじみの深い食品でありながら加熱条件と焼き魚の仕上がり状態との関係を客観的に関係づけた報告はこれまで見られない。 平成7年度は、まず、焼き魚の仕上がり状態を評価するための官能検査用シートの作成を試みた。日本料理専門調理人9名による聞き取り調査、60名に対するアンケートから予備的な評価シートを作成した。評価シートを用いて実際に焼き方の異なる5種のアジを調製し、熟練パネルによる官能検査を行った。その結果に基づいて修正し、最終的な「焼き魚おいしさ評価シート」を作成した。これは以下の7項目から成る。すなわち、姿形の良さ、表面の状態、焼きムラの有無、焦げ色、身のほぐれ、汁け、うまみである。これらはそれぞれ10、8、6、20、6、25、25点ずつ配点され、合計が100点となっている。このシートを用いて消費者パネルに焼いたアジを評価させたところ、同じアジに対する熟練パネルの評点と高い相関(r=0.95)が得られ、この評価シートの実用性が確かめられた。 魚の焼き加熱の方法を比較検討するための条件の決定は以下の3種で行った。すなわち、炭火、ガスブラスト式およびガスブンゼン式加熱機器である。これらの伝熱特性を熱源の波長分布、熱源の温度で評価し、同時に魚の加熱中の炭酸ガスおよび水蒸気量を測定した。熱源側の魚の表皮直下の温度履歴が等しくなるよう熱源からの距離を調節して魚を焼いたところ、魚の中心部の温度履歴は3種の熱源で等しくなった。作成した「評価シート」を用いて焼き魚の官能検査を行ったところ、炭火とガスブラスト式加熱機器で焼いた魚は有意の差は認められなかった。
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