研究概要 |
抗酸化系ビタミンCの機能を検討するため、遺伝的にビタミンCを合成できないODSラットをビタミンC欠乏食で飼育し、各種臓器におけるビタミンCの減少を我々が開発した特異的・高感度測定方法(Anal.Chem.,64,1505-1507(1992))で追跡した。この結果、12臓器はビタミンC減少速度様式から4種類に分類されることが明らかになった。この中で脳はビタミンC減少速度が最も遅いことが判明した。25日間ビタミンC欠乏にしたラットの脳、心臓、肺、肝臓、腎臓について、脂質過酸化反応のメディエーターと考えられる、脂質ヒドロペルオキシド含量を我々が昨年確立した方法(Anal.Chim.Acta,307,97-102(1995))で測定した結果、最もビタミンCが残存していた脳において対照群と比較して有意に増加していることが明らかになった。脂質過酸化の他のパラメーターとしては、TBARSが心臓において増加、肝臓ではグルタチオンが減少、心臓ではグルタチオンペルオキシダーゼ活性が対照群より有意に上昇していた。 次に、脂溶性抗酸化系ビタミンとして良く知られるビタミンEについての検討を行なった。ラットをビタミンE欠乏食で飼育し、ビタミンE添加食で飼育した対照群と比較した。欠乏4週間で心臓、肺、腎臓における脂質ヒドロペルオキシド濃度が有意に増加していた。通常ビタミンE欠乏の症状を見いだすには何か月もの時間がかかることを考えると、わずか4週間で変化が見られる脂質ヒドロペルオキシドは生体内ラジカル反応の指標として極めて優れたものであると結論できる。欠乏時におけるビタミンEの減少速度を各種臓器で比較すると、やはり脳で減少が遅かった。このことは、脳は抗酸化系ビタミンが消失しにくい機構を備えていることを示唆する。
|