研究概要 |
持久性トレーニングは拡張性の心肥大を生じる.本研究の目的は心肥大にともなう心筋毛細管床の形態変化について明らかにすることである.前年度では,持久性トレーニングによって毛細血管の新生は起こらないものの,内腔の拡張が生じることを明らかにした.毛細血管内腔の拡張は特に高強度のトレーニングを実施した場合に起こり,それにともなって毛細血管表面積が増加することが示された.毛細血管は細胞の活動に必要な酸素や栄養成分を供給するが、毛細血管表面積の増加はそれらの拡散能力を高めることになる.すなわち,持久性トレーニングは心筋の末梢循環能力を亢進させると思われる.本年度はこれらの知見を学会発表するとともに,論文として公表した.ところで,毛細血管の拡張という形態変化は骨格筋においてはこれまでに観察されていない.そのため,この形態変化が心筋に特異的なものであるのかどうかを明らかにするために,筋肥大を生じさせた骨格筋において毛細血管数と内腔の観点から検討を加えた.これはラットの骨格筋に慢性的な過負荷を生じさせて筋肥大を誘発させる実験モデルによって行った.その結果,心筋とは対照的に骨格筋では筋肥大にともなって毛細血管数が増加するものの,その内腔形態には変化が見られなかった.このことは,心筋と骨格筋では筋肥大をともなうときの毛細血管形態の適応が異なっており,心筋では毛細血管内腔が変化するのに対して,骨格筋では毛細血管数の変化が生じることが明らかになった.
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