研究概要 |
本研究は筋組織の毛細血管床がトレーニングによって形態的にどのように変化するのかについて、毛細血管の数やその内腔の両面から明らかにしようとするものである. 前年度までの研究から,心筋と骨格筋ではトレーニングに対する毛細血管床の形態適応が異なっている可能性が示唆された.そこで,今年度は条件の異なる持久性トレーニングが骨格筋に及ぼす影響を調べ,心筋との適応の違いについて比較検討した.実験にはラットを用い、低強度ならび高強度の持久性ランニングトレーニングを4週齢時から12週間にわたり負荷した.トレーニング終了後,灌流固定法によって足底筋を摘出し組織標本を作成した.トレーニングによって足底筋の毛細血管数は有意に増加し,その増加程度は低強度と高強度トレーニングでほぼ等しかった.ところが,低強度トレーニングでは内腔の小さな毛細血管が増加し,高強度トレーニングでは大きな内腔の毛細血管が増加した.その結果,高強度トレーニングのみに毛細血管表面積の有意な増加が認められた.さらに,持久性トレーニングによる毛細血管の数と内腔の変化過程について明らかにするために,1週間,3週間,9週間と期間の異なる持久性トレーニングをラットに負荷した.その結果,毛細血管はトレーニング開始から1週間から3週間にかけて増加したが,毛細血管内腔の拡大はトレーニング開始3週間以降に観察された.したがって,毛細血管の内腔の拡大は血管の新生が起こる以前には生じないこと,毛細血管数の増加がプラトーに達した段階で,毛細血管の内腔の拡大が見られることが明らかになった.以上の形態観察はすべて光学顕微鏡によって行われたものであるが,電子顕微鏡を用いての血管内皮細胞や基底膜の形態計測はいまのところ分析中である.
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